青い草の寝床

それから五日程して、よく沼岸の砂地にあそびにくる、尻尾《しつぽ》の短い赤い小鳥が姉さんの居処をしらしてくれました。『この沼から十間程はなれた、青い草の寝床によくねむつてゐましたよ。』 赤い小鳥はいひました。『まあ、あの子は何処へでもよく歩るき廻る子でね。』 母親は姉娘の居処が知れましたのでうれしさうに小鳥にむかつて言ひました。 それから五六日して、沼岸に赤い小鳥があそびにきましたので、『あの子は、まだねむつてゐるでせうか。』 父親はかう小鳥にむかつてたづねました。『よくねむつてゐますよ、黄色い上着もなにもぬいでしまつて、まつ白い体をしてね。』 小鳥はいひました。『風邪をひいては困るのにね。』 母親はちよつと心配さうな顔をして言ひました。 それから五六日経つて、沼岸に赤い小鳥が来ましたので親達はまた、『姉娘はまだねむつてゐるでせうか。』と質《たづ》ねました。赤い小鳥は、『ずいぶんよくねむつてゐますよ。眼玉がとけて了ふほどね。』 と答えました。『まあ、なんといふ呑気《のんき》な、幸福な子だらうね。』 黄色い魚の一家のものは、みな安心したといふ風に、沼の水底の家に帰つて行きました。しかし妹娘の魚だけは、なにかしら悲しい気持がこみあげてきましたので、さめ/″\と沼岸にいつまでも泣いて居りました。 いまでも姉娘の魚は青草の上にねむつてゐるといふことです。そして青い小父さんが、なんといふ名前の魚であるか、黄色い魚の一家はいまでも不思議に思つてゐるといふことです。(大14・1愛国婦人)[#改ページ]

— posted by id at 12:34 pm  

T: Y: ALL: Online:
Created in 2.0247 sec.

http://ebook-my-home.com/