勇ましい若者

『旅の騎士、太陽の申し児のやうな勇ましい若者。あなたの不審はもつともです。』 かう口をきつて王さまが物語るには王さまが国中でいちばん勇ましい王子を選むためにぜひ、騎士達の通らなければならない野原の寺院に、王女を住はせました。そして路には、家来の者を隠してをいて、いち/\通る騎士の数を、法螺の貝をふいて合図をして知らせました。 王女はその合図によつて食事やら寝台やら秣桶、毛ブラシなどの用意をいたしました。 そして王女はその夜泊つた騎士のうちから、いちばん勇ましい騎士を選んだのでした。 ではあのまつ暗な墓地で喰べた赤児はどうしたのでせう。 みなさん、その赤児といふのはほんとに馬鹿らしい程、お可笑なものです。それはお砂糖でこしらへた、赤児のお人形さんであつたのです。 黒い騎士はその日、りつぱな式があつてめでたく王子の位についたのでした。(大15・9愛国婦人)[#改ページ]

或る手品師の話[#「或る手品師の話」は大見出し]老人の手品師が、河幅の広い流れのある街に、いりこんで来たのは、四五日程前でした。 手品師は、連れもなくたつた一人で手品をやりました。 ――はい、はい、坊ちやん。嬢ちやん。唯今この爺《ぢ》いが、眼球《めだま》を抜きとつて御覧にいれます。 手品師は、両手で右の眼を押へて、痛い痛い、と言つて泣きました。 それから手品師は、はつと気合をかけて、眼から手を離すと、驚いたことには、手品師の眼は抜きとられて、右の掌《てのひら》の上に、眼の球がぎらぎらと、お日さまに光つてゐました。 ――やあ、眼球《めだま》だなあ。 ――驚ろいたなあ、本当の眼球《めだま》だ。 見物の子供達は、驚ろいてしまひました、ところが、手品師の掌の上の、眼球をだんだんとよく凝視《みつめ》てゐると、これはほんものの眼球ではなく、ラムネの玉ではありませんか、見物人が呆れてぽかんとしてゐると、老人の手品師は、 ――あははは、みなさん左様なら。

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