夜店の金物屋さん

ふと、トロちやんは、夜店の金物屋さんが『悪魔は爪から出入りをしますよ。』 といつたことを思ひ出したのでさつそく、お母さんに爪切鋏できれいに、手足の長く伸びた爪を切つていただき、そして顔や手足を洗つて寝床に入りました。 お母さんは喜んで『トロちやんは、なかなかお姉さんになりましたね、御褒美に明日は、トロちやんと、ミケとに赤いお座布団をこしらへてあげませう。』 と言ひました。ミケといふのは、トロちやんの大好きで仲善しの飼猫です。 そこでその御褒美を楽しみに、眠りました。 真夜中頃、トロちやんの枕元で、ごそごそと、誰やら歩るき廻るやうでした。ふと眼をさましました。見ると背が三寸位の小さな人間が、行列をつくつて、トロちやんの枕元を、わい/\騒ぎ廻つてゐました。 尖つた帽子をかぶり、痩せた顔で、みなりつぱな長い八字髯を生やしてゐました。 小人《こども》達は、トロちやんの指のあたりを走りながら『親指にも扉《と》がしまつてる。』『人さし指にも扉がしまつてる。』『中指にも扉がしまつてる。』『くすり指にも扉がしまつてる。』 と歌つてゐました。トロちやんは、さては爪から出入りする悪魔達だな、と思ひました。『しめたッ、小指の扉が開いてた。』 突然、悪魔の一人が叫びました。悪魔たちは、わつと叫んで、先を争つてトロちやんの手にかけのぼり、いちばん肥つちよの悪魔が、まつ先に、トロちやんの小指の爪に頭を突込みましたが、体が肥えてゐるので、思ふやうに入りません。 トロちやんは、たいへん驚きました。

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