高い踏台の上にあがつて

狼はこの高い踏台の上にあがつて、小手をかざして王城の方をみながら、王様からの迎へをいまか/\と待つてゐました。 すると狼は急に慾が出て来て、その附近の大きな桐の木に眼をつけ始めました、そして樫の木の踏台の妻君を捨てゝ桐の木と結婚してしまひました。 樫の木の踏台の妻君は、三日三晩泣きあかしました、そしてムラ/\と嫉妬の気持が起きて、いつかふくしゆうをしてやらうと考へました。 狼は新しい妻君の桐の木を伐り倒して、高いハシゴを作り、その上に昇つて、以前のやうに王様の迎へを今か/\と待つてゐました。するととうとう時が来ました。 王様は自ら馬車に乗つて、大工を迎へにやつて来ました。そして王様のお抱への大工に出世してしまひました。 しかし以前の妻君であつた樫の木が承知しません、また林の樫の木は、その樫の木のことを同情して『何といふ薄情な狼だらう、住めるだけ樫の木の洞穴に住んでゐて、それから伐り倒して踏台にして、それを捨てゝ他の新しい桐の木と結婚するなんて』 と狼を憎む声がだん/\高くなつて来ました。村の王様といふのは、珍らしいもの好きな性質がありましたから、憤慨してゐる樫の木がおかしくてなりません、そこで茶目気を出して、踏台をお城に雇ひ入れることにしました、踏台は王様に雇はれると急に大きな声で叫びだし『悪い狼奴がどうして妾を欺《だ》まして、出世をしたか――』といふ長い文章を書いて王様に進呈しました。 王様はこれを城壁にはつて、村に住んでゐるものゝ意見をきゝましたが、誰一人として狼の味方をするものがありませんでした、みんな樫の木が可哀さうだといふのでした 狼はすつかりしよげてしまつて、長い耳を垂れて耳を塞いで『世の狼共よ、かしの木と結婚するのは良いが、決して踏台にはするもんではないよ』 といひました。(小熊夫人書き写し)[#改ページ]

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