鶏たちはこんな話をいたしました

『みんなは悪魔がなにに化けるか注意してゐなければいけないよ、そしてもしミミヅにでも化けたら、すぐ喰べてしまふんだね』 鶏たちはこんな話をいたしました。 その翌る朝 一羽の雌鶏が、小悪魔がどこへ、まい朝出かけるのか、その後をそつとつけて見ました。 すると悪魔は、ピョン、ピョン、とはねて蛙のやうな足つきをして、村へ入りこみました。そして、一軒ごとに、百姓家の窓に、はひ上つてその窓から首をつきいれて、『娘さん、お早う』 と娘さんたちに朝のあいさつをして歩るきまはつてゐました。 そして片つぱしから、この村の娘さんのゐる家といふ家を、のこらずあるきまはるのです。 娘さんは、窓から、ちいさな気味のわるい顔がとつぜんあらはれたので、びつくりします。『まあ、なんて気味のわるいひとなんでせう。とつぜん顔なんか出してさ、挽臼《ひきうす》にいれて粉にしてしまひますよ』 となかには、プンプン怒る娘さんもゐました。娘さんたちは、悪魔の朝の挨拶などは少しも気にもとめず、さつさと身じたくをし、何時《いつ》ものやうに鍬を手にして畑に、働らきにでかけました。

 この村に、たいへん美しくそしてまたオシャレな女の子がをりました。悪魔はその女の子の家の、高い窓にいつものやうに、ひらりと飛びあがつて、猫撫で声で、『娘さん、お早う』 といひました。女の子は、大きな鏡のまへで、お化粧の真最中でしたが、この声をきいて窓を見あげました。窓の上には、なかなかりつぱな八字鬚のある男が、顔を突出してをりますので、『お早う、お入りなさいな』 といつて、につこりと笑ひました。すると悪魔は、ひらりと窓から部屋にとびをりて、ふいに娘さんの頭にとびかかり、女の子の髪の毛を、一つかみむしつて、飛ぶやうににげてしまひました。 女の子は、びつくりして、たいへん腹をたてました。

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