わたしの髪の毛

『さあ、わたしの髪の毛を、いますぐに返してちやうだいよ』 女の子は、たいへん大きな声をたてて、恐ろしいけんまくで、悪魔をなじりました。『喰べてしまつた』 小悪魔は、めんぼくなささうな表情をいたしました、ほんとうは髪の毛はたべてしまつたのではありません、悪魔は、一晩のうちに、髪の毛で、チョッキを編んでしまひ、ちやんと上着のしたに着込んでゐるのでした。 悪魔は、女の子にむかつて、平あやまりにあやまつて『あれは、お友達になつた約束にもらつたのですから』 と言ひましたが、女の子は承知をしませんでした、そこで悪魔は、『それでは、かはりにあなたのすきなものを、なんでもさしあげますから、ゆるして下さい』 と言ひました、女の子も機嫌をなほし、さて、慾ばりらしく、あれこれと色々ともらふ物を考へてをりました。『それでは着物を沢山にほしい』 といひました。『たいへんおやすい御用です、着物は十枚もいりませうか』 と悪魔がたずねました、『まあ、なんてケチなんでせう、いくら着ても、着ても、着れないほど、たくさんの着物がほしいんですよ』 といひました。 悪魔は承知して、ごそごそと土の中にもぐり込んでしまひました、女の子は、悪魔がたくさんの美しい着物をもつてくるのを、いまかいまかと、まつてをりました、しかしなかなか現れません、そのうちに女の子は地面をいつまでも見てゐることが退屈になりました。『ことによつたら、あんな約束をしたのは嘘で、地の底に、にげてしまつたのではないだらうかしら』 女の子は、かううたがひながらも、それでもいつまでも根気よく、悪魔のでてくるのをまつてゐました。『ああ、いやだ、いやだ、百姓がいやになつた』

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