温和しい強盗

寓話的な詩二篇

温和しい強盗

真夜中、戸をたたくトン、トン、トン、トン[#ここから1字下げ]「今晩は、今晩は夜更けて済みませんが強盗ですが入つて構ひませんか」「どうぞ――」「ははあ、人道主義者の家だな」[#ここで字下げ終わり]真夜中、戸をたたくトン、トン、トン、トン[#ここから1字下げ]「今晩は、今晩は夜更けて済みませんが強盗ですが入つて構ひませんか」「真夜中に喧ましい奴だ伝家の宝刀で、ぶつた切つてしまふぞ」「ははあ、軍人の家だな」[#ここで字下げ終わり]真夜中、戸をたたくトン、トン、トン、トン[#ここから1字下げ]「今晩は、今晩は夜更けて済みませんが強盗ですが入つて構ひませんか」「眠い、眠い、ムニャ/\今頃誰だ、強盗?まご/\してゐないで早くそこの橋を向うへ渡つてしまへ」「ははあ、刑事の家だな成程、あの橋を渡れば向うの署の管轄か」[#ここで字下げ終わり]真夜中、戸をたたくトン、トン、トン、トン[#ここから1字下げ]「今晩は、今晩は夜更けて済みませんが強盗ですが入つて構ひませんか」「いち/\ことわつて入る奴があるか、ずつと通れ」「ははあ、こゝは刑務所だな」[#ここで字下げ終わり]

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