作家トコロテン氏に贈る

作家トコロテン氏に贈る

思ひあがつた血走つた眼でみるみるうちに人生の疑ひを解きほどしいとも見事に書きあげた詩や小説なんと嘔吐する程の数で糞尿のやうに嫌悪されつつ世間の中に撒きちらされてゐることかこれらの書きものの氾濫は一層国民の気持をコジらして手で書かれた言葉が口から吐かれる言葉よりも価値もなく軽蔑されてしまふのだ国民を文学の恐怖症に陥らせる者よお前、すでに去勢されたものよ何の主張する意志をもたないものが何かを主張しようとする空しい努力を払ふものその名を文筆家と呼び作家と称すお前の心の中のグウタラな慾望が暴君のやうに他人に人生の物語りを注ぎこまふとする水にうすめられた牛乳よりももつと何の営養ともならないものを吐瀉するやうに書きなぐり読者の心を下痢させるために供給するつぎはぎだらけの貧民の夜具に眠る勇気ももたないくせにいつぱしはつきりとした自分の座つてゐる階級的場所を知つてゐるかのやうなデレリとした思想のぬき衣紋で観客ばかり気にしてゐる興業師のやうな根性で読者の数を気にしながら通俗な小説を書く物語りの中にお座なりの進歩的分子をちらりと顔をださせる常套手段この自分で書いた作中人物の批判にさへ到底堪へられさうもないやうな哀れな成り上り根性の神経質さでそつと作中人物を出したり引つこめたりする箱詰めにして花嫁を送る惨酷な犯人の一人に加担して得々として犯跡をくらますために自分で犯人になつたり弁護士になる自由を書いてゐる文章の中で見事にやつてのけるおゝお前、砂のまじつたトコロテンのやうな味もそつけもない散文をつきだすものよ。

— posted by id at 02:45 pm  

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