大弓場の詩

大弓場の詩

的は少なく矢数は多くあたる筈だが当らない心のくるひ手足のくるひねらつてうてばはずれるばかり心も空にあらぬことをば考へてヒョウと放せばみごとに金的あゝ、人生はとかく皮肉な弓の的

小松の新芽  ――北海道に帰つて――

私はふるさとに帰つて手痛いほどに自然の愛を心と体とに受けとつた人間を底知れぬほど収容する大きな青い墓穴と呼んでふさはしいやうなきれいな空を見あげながら十年ぶりで始めて私の感情をしまつてをくことの出来さうな空の抽出しがあることに気がついたまた私の都会生活でいたんだ心のまはりをガーゼのやうな白い雲が飛んだニレの樹にもたれながらしばらく考へたこの辺りでは自然からも人間からも伐り出すことのできるものが残つてゐさうだ私はそれを新芽も青く柔らかく行列をつくつて生へてゐる小松の群をみてさう思つたあいつらは全く新しいしさうだ、人間はまだ全く古びてはゐなかつた筈だ、と人間も自然も新しいのだ憎悪、愛、それらに古い被布を着せるのはまだ早い小松の伐りだされる遠い日のことを思ふ我々も時代から全く新しい憎悪と、愛とを発明しようそれを伐り出さなければならない強く憎み、強く愛する仕事しかもそれは新しく発明されたものであれば無限に展開されるだらう。

— posted by id at 02:46 pm  

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