心細き

[#ここから1字下げ、折り返して2字下げ]○本文の法にて煮たるものは最初|樺色《かばいろ》にて一日二日を過ぐると次第に黒味を帯び来る。○一旦煮たるものを二、三日過ぎて再び煮返せば長く持ち豆もいよいよ柔くなる。○ヒネの固き豆は本文の時間より一層長く煮るを要す。○蚕豆を煮る時昆布と共に煮れば双方共に柔くなりて味よし。ただしこれは普通の新豆を煮る場合なり。もっともお多福豆に加えてもよし。○鯉は蛋白質壱割九分、脂肪一分ありて滋養分多し。鯉の味噌汁を産婦に飲ましむれば乳の量を増すと称するは鯉も味噌汁も共に滋養多ければなり。[#ここで字下げ終わり]

[#4字下げ]第二十五 心細き[#「第二十五 心細き」は中見出し]

 台所にて料理の手伝《てつだい》をなしたる大原はお昼の御馳走を例の如く飽食《ほうしょく》せり。お豆腐の餡掛《あんか》け、薩摩芋の梅干韲《うめぼしあえ》、同じくセン、同じくフライ、同じくマッシ、自分が少し焦付《こげつ》かせたる干瓢《かんぴょう》なんどいずれも美味ならざるはなし。さりながら大原の悦《よろこ》びはお料理の味よりもお登和嬢と共に御馳走を喫せしにあり。なるべくなら晩にもこの楽《たのし》みを再びせんと「お登和さん、貴嬢《あなた》も御緩《ごゆる》りと遊んでいらっしゃい。晩までに此方《こちら》の小山君もお帰りになりましょうから」と頻《しきり》に嬢の去らん事を気支《きづか》う。お登和は一刻も早く立去りたし「イイエ、家にも用事がありますからお暇《いとま》を致します。奥さん、大《おおき》にお邪魔《じゃま》を致しました。

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