料理の原則

[#ここから1字下げ、折り返して2字下げ]○クリームの鑵には上面の両端に小さき星形あり。その処へ太き釘を当て槌にて打ち小孔を開け、その孔よりクリームを鉢へ注ぐべし。注ぎ終りし時は細き竹釘あるいは木釘を二本作りその孔へ差し込みおくべし。○クリームの上等は生の牛乳を平たき器に入れ、一日冷たき処に置き上に浮きたる濃き脂肪の凝結《かたまり》を取りて使うべし。それがクリームなり。○ビフテキは最初に肉を三十分間サラダ油に漬けおきフライ鍋にバターを敷き幾度も肉の両面を焼き塩胡椒をかけ用ゆ。日本風の鉄網の上にて塩胡椒を振かけ幾度も裏返しつつ焼くが味よし。○牡蠣は蛋白質壱割四分、脂肪一分五厘ありて、貝類中滋養分多きものに属す。かつ他の貝類に比して消化良き故最も賞用せらるる。[#ここで字下げ終わり]

[#4字下げ]第三十二 料理の原則[#「第三十二 料理の原則」は中見出し]

 家庭の経済は原料の廉《やす》き品物を蒐《あつ》めて味|佳《よ》き料理を作るにあり。客の小山一々感心し「このビフテキの側《そば》にあるキントンのようなものは大層|美味《うま》いが何だね」主人「それはジャガ薯《いも》のマッシといってよく湯煮《ゆで》たジャガ薯を裏漉《うらご》しにして牛乳を加えて塩と砂糖で味をつけたのだ。ビフテキには是非ジャガ薯を添えなければならん。ビフテキは中が生焼《なまやけ》で截《き》ると血が出る位だから牛肉中に潜伏《せんぷく》する真田虫《さなだむし》の原虫がよく死なん。そこでジャガ薯を一所に食べるとその虫が死ぬという事だ」客「そういう訳で薯を添えるのか。

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