玉子の善悪《よしあし》

○卵の平均成分は百分中蛋白質一割四分、脂肪一割余、鉱物質一分五厘、水分七割四分なり。○黄身の成分は百分中蛋白質一割六分、脂肪三割余、鉱物質一分三厘、水分五割二分なり。○白身の成分は百分中蛋白質二割余、鉱物質一分六厘、水分七割八分なり。○本文の外に一の軽便なる半熟法あり。先ず湯を沸立たせ、玉子を割れざるため辷《す》べらせるように入れて三十秒ほど置き直ぐ火より卸《おろ》して火気のある温き処に五分間置くなり。多くの玉子を湯に入れんとする時は笊《ざる》のままがよし。[#ここで字下げ終わり]

[#4字下げ]第三十八 玉子の善悪《よしあし》[#「第三十八 玉子の善悪」は中見出し]

 小山の妻君は教《おしえ》に従って深き鍋を火鉢に載せたるが玉子の箱を台所より客の前に持ち来り「中川さん、おついでにどうぞ玉子の選定法《よりわけかた》を教えて下さい。全体玉子はどういうのが良いのでしょう」中川「そうですね、玉子の良否《よしあし》を択ぶのは必要な事ですが日本人は平生《へいぜい》食物問題に不注意だから玉子屋が善《よ》いのも悪いのも皆《み》んな混《ま》ぜて売っていますし、買う方も構わずに買います。西洋では色々区別があって直段《ねだん》の高下《こうげ》はその大小によらずして品質の良否によるそうです。先ず大体からいうと玉子の皮がテラテラ光って光沢《つや》のあるのは古い証拠で、少しも光沢のないちょうど胡粉《ごふん》を薄く塗ったようなのが新しいのです。玉子は古くなるほど胡粉のようなものが除《と》れて段々光って来ますから光ったものを買ってはなりません。それから皮の薄紅《うすあか》いのと白いのがありますね、薄紅いのは肉用鶏《にくようけい》の産《う》んだので白いのは産卵鶏の産んだのですから白い方が遥《はるか》に上等です。西洋では白い玉子と紅い玉子とは白い方が直段も高いそうです。よく気をつけて御覧なさい。紅い方は大概皮が厚くって白い方が薄いものです。皮の厚いのは滅多《めった》に産まない肉用鶏のですから石灰分が多いのです。

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