軽いのは品質が悪い

薄い方は沢山産むから石灰分が少いのです。それから同じ大きさでも重量《めかた》が大層違って十二|匁《もんめ》のもあり十四匁のもあります。軽いのは品質が悪いのでかつ必ず古いのですから重いのを買わなければなりません。してみると光沢のない白い玉子で重いのが一番上等なのですけれどもモー一層上等なのは受精しない玉子です。受精しない玉子は味も大層良いし、保存期も大層長いそうです」と説明ここに至りて聞く人に解しやすからず。主人の小山不思議そうに「受精しない玉子とはどういう訳《わけ》だ」中川「雄鶏《おす》と交尾しないで雌鶏《めす》ばかりで産んだのさ」主人「いよいよ不思議だ、雌鶏ばかりで玉子を産むかね」中川「産むとも、ヒョコヒョコ産むよ。その代り母鶏《おやどり》に抱かせても孵化《かえ》らない。試みに雌鶏ばかり飼っておいてみ給え、雄鶏がいなくとも玉子を産むよ」主人「それなら雄鶏を飼う必要はない、食用にする玉子が欲しければ雌鶏ばかり飼った方が受精せんで上等の玉子を産む訳だね」中川「ところがそうすると妙なもので雌鶏が段々気が荒くなって遂には玉子を沢山産まなくなる。雄鶏がいれば外敵が来てもコーコーと啼《な》いて知らせてくれるし、餌《え》を漁《あさ》る時にも雄鶏が先へ見付けて雌鶏に食べさせてくれるし、万事に保護を受けるから雌鶏も安心して身体を養い生殖の事に全力を尽す事が出来る。雄鶏がいないと雌鶏が自ら外敵も防がねばならず自ら餌も漁らねばならん。物に驚きやすくなって気が忙《せわ》しくなってその方へ身体の精力を向けるから自然と産卵力が減じて来る。雄鶏と一所に置いても寒中は雄鶏の交尾力が寡《すくな》いから雌の産む玉子は多く受精していない。受精していないから味も良し、長く腐敗せんので、世人は寒玉子といって寒中に産むから良いと思うけれども寒中に産んだために良いのでない、寒中の玉子は受精していないから特別の効能があるのだ」主人「なるほど妙な訳だ。受精した玉子と受精せん玉子と外部《そと》から見て解るかね」中川「外面《そと》からでは解らんが割ってみるとよく解る」主人「では割ってみよう。お徳や小皿を二、三枚持っておいで」とむずかしき玉子の検定法が始まれり。

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