流動物

[#ここから1字下げ、折り返して2字下げ]○鰻は蛋白質壱割八分、脂肪壱割一分、鉱物質一分一厘、その余は水分なり。○鰻の毒物はイヒチトキシーンと称して鰻の血液中にあるものなり。鰻と鮭は魚類中最も消化悪きものなり。○鰻と生梅とは最も怖るべき食合せの禁忌なり。これ一《ひとつ》は生梅あるいは不熟の李《すもも》等には時として青酸といえる大劇毒のあるに因る。青酸毒は一滴を吸入しても人をして昏倒せしむ。青酸中毒は速《すみやか》に食物を吐出せしむるが肝要なり。○鰻の蒲焼は裂きたる鰻を一旦蒸し、蒸したるものをタレをつけながら火の上にて焼き、その後再びザット蒸し、またザット焼きて出せば上等なり。○鰻の骨はスープにしてタレを製するもよし。焼きて鶏に与うるも功あり。夏日はこれを薫《いぶ》して蚊を追うにもよし。[#ここで字下げ終わり]

[#4字下げ]第四十四 流動物[#「第四十四 流動物」は中見出し]

 智識の進歩するは物を研究するにあり。然《しか》れども我邦《わがくに》にはいまだ研究道楽の流行なし。殊《こと》に毎日の食物は人類生存の大本《たいほん》にして最も研究を要すべきに世人の多くその事に不注意なるは惜むべし。大原満の失敗も必竟《ひっきょう》ずるに食物上の無智識より起れるなり。「中川君、僕はモー懲々《こりごり》したからその後は一切《いっさい》固形物を食わん。毎日ソップを配達させてソップと牛乳ばかり沢山飲んでいるがなかなかまだ快方に向わん。一度腸胃を壊すと急に癒《なお》らんものと見えるね」中川「イヤ急性の腸胃加答留《ちょういかたる》は摂生法《せっせいほう》次第で直きに癒るが流動物ばかり飲んでいてはいよいよ悪くなるね」大原驚き「何故《なぜ》、何故流動物が悪い」中川「何故といって流動物は胃のために極《ご》く悪い、不消化な固形物よりなお悪い。何となれば水分は胃で吸収されない。かえって胃から必要な場合に水分を分泌する位だから水分を多量に飲むと胃の中へ停滞して俗にいう茶腹が張ったように腹がダブダブする。

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