才覚

[#ここから1字下げ、折り返して2字下げ]○緑青の急性中毒は劇烈の腸胃炎を起し大苦悩の末遂には死に至る事あり。この嘔吐物は薄き緑色あるいは青色を呈す。○この急性中毒の応急薬としては生の鶏卵あるいは牛乳を飲むもよし。医師は鉄剤を与う。脂肪類は決して用ゆべからず。脂肪は緑青毒の禁物なり。○緑青の慢性中毒は疝痛、下痢、神経痛等を起し、歯ぐきの色次第に緑色を帯ぶ。時としては肝臓病を発する事あり。この慢性中毒は世間に多きものなりという。○青昆布を青銭にて製する事は今より三十余年前故後藤象二郎伯が大阪府に知事たる時一旦これを厳禁せしがその後禁|弛《ゆる》み製造者が再びこれを使用するに至れり。昨年再び禁令下りて製造者よりこの歎願書を出だせしなり。[#ここで字下げ終わり]

[#4字下げ]第六十 才覚[#「第六十 才覚」は中見出し]

 小山の心の動きたるは妻君のこの上もなき悦《よろこ》びなり「そんなら貴郎《あなた》、真鍮鍋《しんちゅうなべ》や青銅鍋《からかねなべ》を廃して西洋鍋を買って下さいますか」小山「ウム買いましょう」妻君「そうしたら早速今日のようなお料理を拵《こしら》えて家でも一月に一度ずつは美味《おい》しい御馳走を食べる事に致しましょう」小山は何事も争い難《がた》し「ウムそうしよう」妻君「今日の御馳走の中《うち》で外の物は容易に買えませんけれども一番先へ出た鯛の頭のスープは早速家でも遣《や》ってみましょう。お登和さん、それにする鯛は大きくっても小さくっても構いませんか」お登和「鯛の頭は大きいほど良いのです。

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