九月二十四日(土曜)

[#1字下げ]九月二十四日(土曜)[#「九月二十四日(土曜)」は中見出し] 秋季皇霊祭のマチネー。昼の部は九分強の入りである。「女優と詩人」の時、セリフを一つとばしてしまひ、三益に小声で注意されたらサア可笑しくなって、吹いたので、三益も渡辺も吹き出してしまひ、大弱りした。昼終ると、山水楼へ行って食事。夜の部は補助も出切った。昨日に引き続き、刑事が来て盗難の調べを続け、役者が代る/\調べられた。僕が挨拶に行くと、「此ういふ気分が芝居の方に影響しやしないかと心配してゐますがね」と親切なので驚いた。夜も「女優と詩人」で同じとこへ来ると吹いちまってしまらず、弱り。まっすぐ帰り、ウイを大分のみ、寝る。

[#1字下げ]九月二十五日(日曜)[#「九月二十五日(日曜)」は中見出し] 今日もマチネー。座へ行くと、九分といふところ。「女優と詩人」で、昨日のところへ来ると又可笑しくなるんじゃないかと心配してたが果して又笑ひ出しちまふ、心が弛んでゐると、自分で叱っても、どうも笑っちまって弱った。昼終ると市川指圧氏来りやる。三糸重二来り、ホテ・グリへ連れて行き、十二月から入座させるやう話す。夜も九分である。何うも、いぢけたヘンな気持で芝居をしてゝいけない、神経衰弱か。「女優と詩人」で又笑っちまひ、自分でクサる。ハネてまっすぐ帰宅。

[#1字下げ]九月二十六日(月曜)[#「九月二十六日(月曜)」は中見出し] 母上は今朝早く熱海へ祖母上等と一緒に行かれた。十二時にニューグランドへ行くと東宝映画連も時間はまことに守らない。先へ食事しちまふ、トマトクリームスープにポークチャップ。皆漸く来り、「子供の大将」の台本、一と通り読む。かなりじみで、笑ひが少い。撮影は来月四・五日開始。又あの生活が始まるのか。滝村と丸善へ寄り、琥珀のパイプ(吸口)と、ウォタマンの万年筆を買った。銀座のアラスカへ寄る、オルドヴルと、ポタアジュ・サンジェルマン。時々憂鬱になっていけない。座へ出て、市川指圧来り三十分。入りガゼン落ちて六分強位、やれ/\がっかりだ。犬の医者は井上でやったら具合わるし。ハネて、ルパン。 一日から二十五日といふ御定法を破って、僕の芝居はいつも月一杯かそれ近く打たされて来た、そして終り迄満員であったので、段々無理をして、初日の一日が守れず、五日初日の三十日までなんてのが多くなったが、此の御時世には許されず、二十五日すぎれば、ガゼン客落ちる。一日―二十五日を、此の事変中は、ぜひ復旧させなくてはならぬ。

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