十月三日(月曜)

[#1字下げ]十月三日(月曜)[#「十月三日(月曜)」は中見出し] 成田山へお詣りしようと道子と十一時の迎へで出かける。上野で高橋の姉を拾って、江東の方へ向ふ。車中高橋姉、成田不動は夫婦でお詣りするところではないと、色々な例を話すので、方向転換して、柴又の帝釈さまへお詣り。今日は狂ひ天気で正午が三十一度といふんだから驚く。帰りは新宿の東宝映画劇場へ入り「鶴八鶴次郎」を見る、佳作である。徳永フランクに逢ふ。チャプリンへの手紙について話す。それから日本橋へ出て偕楽園の支那料理、変ってゐてとてもうまかった。銀座へ出て、高橋姉と別れ、新刊二冊買ひ、スタンドのいゝのがあったので買って帰宅。うちの座員の放送あり、きく。つまらず。

[#1字下げ]十月四日(火曜)[#「十月四日(火曜)」は中見出し] 昨夜川端康成の「作家と作品」を一時半頃迄読んでゐたが、さて眠れなくなり、アダリンをのむ。十一時に伊藤松雄氏が来り、例によって、よく喋り出す。一時すぎに、斎藤豊吉と穂積純太郎来る、もっと彼等を勉強させることを話したかったのだが、「そろ/\お暇する」と言ひ/\伊藤松雄いっかな動かず、しきりに喋る。花井淳子も人形を土産に遊びに来り、僕はウイを皆は酒を、牛肉のすきやき。古いビクターの赤盤マッコーマックのティパレリーの歌をきいてその甘さにうっとりする。十時すぎ、ふら/\と酔ってねてしまふ。

[#1字下げ]十月五日(水曜)[#「十月五日(水曜)」は中見出し] 東京映画撮影所から九時半に砧へ来いとの電話あり、八時起き。久しぶり撮影所へ。本読みと言ってもまだ三分の二も出来てない、すぐにはクランク出来ず、待機といふいやな状態になった。東映本社へ行く。森岩雄とニューグランドで話す、チャプリンへの手紙をたのみ、かねてのストーリーを話す。次に文ビルへ寄る、横浜は明日、有楽座は今日の初日で急しい、キネマ旬報を久々で訪れて田中三郎と話す。夜は、久しぶりの阿部豊、十何年ぶりの溝口健二、田中三郎と会し、いつ迄たっても好きな映画道の話に、二時近くなった。

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