十月六日(木曜)

[#1字下げ]十月六日(木曜)[#「十月六日(木曜)」は中見出し] 映画といふ奴はこれで困る、折角待機してゐても今日は仕事無し、早くから分ってれば旅ぐらゐ出来るのに。藤山のとこへ電話かけると留守で通じない、藤山が定らないと十一月の大阪の狂言が確定しないので弱る。川端の「作家と作品」を読了。横浜組の初日、柳から大盛況との電報あり。伊馬鵜平から贈られた「義歯の行列」を読む。あんまり面白くないが熱心な人故感想を書き送りたいと思ふ。夕方母上帰られ、熱海の十日間が燈火管制でさん/″\だったとの話、アンマをとる。「奇術師夫婦」のプランを練り、一景を少し書き出す。二時頃ねる。

[#1字下げ]十月七日(金曜)[#「十月七日(金曜)」は中見出し] シナリオ出来、打合せのため十二時に撮影所へ行く。変更々々で、主人公の商売が保険屋になったり小使になったり、結局野球場の掃除夫の如きものとなったらしい。車で横浜へ。横浜へロッパ・ガールスが出てゐる。表へ廻って見物し、ダメを出す、わりによろしい。浜へ来たついでにヘイチン楼へ行き、柳・堀井・斎藤で食事し、すぐ又東京。有楽座、「当世五人男」の後半を見る。菊田の成功作だ。約束の林房雄と会見、林文三郎と共に、大いに飲み文学を論じた。

[#1字下げ]十月八日(土曜)[#「十月八日(土曜)」は中見出し] いよ/\明朝よりクランクといふこと。十二時半に迎へ来り、文ビルへ出る。十一月の狂言は定ったが、藤山がまだハッキリしないので、いやんなる。東宝ビルの社長室へ、大阪北野の寺本が来たので行き、狂言四つ又は五つ立ての案を出す。それから母上・道子と落ち合ひ、日本橋の偕楽園へ行く。此処は変ったものを食はせるのでいゝ。日比谷映画を見ようと行く。古いエリサベート・ベルクナアの「夢みる唇」役者のうまいのに三嘆した。東京発声の「冬の宿」これも感心した。明日早いので、そのまゝ帰宅。十五夜でお団子が縁側に出てゐる。

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