十月十四日(金曜)

[#1字下げ]十月十四日(金曜)[#「十月十四日(金曜)」は中見出し] 八時起き、あくび連発。東発撮影所。今日も雨もよう。子供に宿題を教へるところ、三四カットやると昼めし。此処の飯なら食はぬがましだから食はず。主婦之友から記者が、人相見を連れて来て会はされる、人相見氏あんまり当らない。午後セット入り。今日は明治座へ行く日だが中々終りさうもない。斎藤寅次郎が、いよ/\癖を出して、火事をやることになり、いよ/\来たかと恐くなった。結局七時近くなった。明治座へかけつける、新生新派花柳一座の旗挙げ。二の「東京の行方」から見る、これはつまらず、久保田万太郎の自慰作品、「呂昇物語」が稍々よく、巌谷三一がよくなった。屋井につきあひ、少々の酔。

[#1字下げ]十月十五日(土曜)[#「十月十五日(土曜)」は中見出し] 今日も定時開始、六さんの家が今日でアガる、子供とからむ芝居数カット、昼はムザンなる食堂で、恐ろしい飯を食った。鈴木静一来り打ち合せ。先日家へ来た東北弁の志願者が来た、滝村に紹介して置く。午後は、六さんの家で師匠と酒をのむところ。これで今日は前以て制限を申し込んであるのでアガリ。阿部豊とホテ・グリ迄行き食事して、雨の中を蒲田の田中三郎宅へ。ジャック・田村・高橋・三郎といふ好メムバーでポーカー。メムバーがいゝので、とても面白かった。結局少々の勝。それから放送局へ、菊田もゐて明日放送の物語をテスト、一回通してチョン。二時頃帰宅。

[#1字下げ]十月十六日(日曜)[#「十月十六日(日曜)」は中見出し] 晴れなら近郊ロケの筈だが、雨、で今日は撮影はお流れ。ひどく寒くなった。三時近く家を出る、歌舞伎座へ。三円以上の芝居は一軒もないのに此処は六円半で、満員補助出切りだから面白い。道子僕他堀井夫妻と柳。羽左と菊五郎でいゝ役は一手になっちまふので他の役者はほんの一寸宛。幕間に支那定食を食ひ、放送局へ。七時半から二十五分、物語「大番頭小番頭」、たゞ読むのだから、楽だが、面白くもなからう(60[#「60」は縦中横])。又歌舞伎へ引返す。菊五郎の女形は何か大きな間違ひをしてゐるやうな気がする。すべて六代目はジミすぎたので羽左の印象が強い。帰りに千成へ寄りすしをつまみ、屋台のホットドッグを食って帰る。 三時から十時まで、七時間といふもの、兎に角見てゐられるといふ「忠臣蔵」ってものゝ偉大さ、こればかりは洋楽のない物足りなさも忘れて、面白く見終った。結局「忠臣蔵」の作者と、そしてショウマンシップの勝利である。判官と勘平の切腹に泣いてゐる女客が大分あった。それはお婆さんか、若くても花柳界の女らしかった。モダン娘は、ちっとも悲しがってゐないのだ。こゝんとこが面白い。

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