十一月十日(木曜)

[#1字下げ]十一月十日(木曜)[#「十一月十日(木曜)」は中見出し] 今日から書き出さうと原稿紙を前にしてみたが、さて気分が出ない。万年筆も気に入らないし――ふと、舶来物が残ってるかも知れないと思ひ、丸善へ行ったが一本もなし。ブラ/″\歩いて、弁天座の、ピエルボーイズの喜劇を見る、中々面白い。二十円だまして取り、ドロンした岸田一夫がいゝとこをやるので、しっかりやれと十円やった、怒られず金貰って面喰ってた。竹川へ行き、おふみどんとクス子の三人でセンコーレン会館の地下ニューグリルてのへ行く。アラスカの一寸落ちたの。座へ出る、今日も九分九厘の入り。白井鉄造夫妻見物、少々風邪気味、サンボアでのみ早目に帰宿し、ルゴール塗り、アスピリンのんでねる。

[#1字下げ]十一月十一日(金曜)[#「十一月十一日(金曜)」は中見出し] 十一時起き。風邪まあ大したことはない。今日は歌舞伎座の六代目見物。一番目は大阪方の梅玉の出しもの「本朝烈女鑑」ねばっこいセリフの連続で大がい参った。次「天下茶屋」六代目の悪写実と時代風とがマッチせず、大阪とのイキも合はず妙なものなりし。幕間に、六階のおでん屋へ行ったらこいつがうまかった。「鏡獅子」は、つまらず居眠りする。どうも六代目ハリキってゐない。かどやのグリルで夕食、コックが代って、うまくないやうだ。座へ出る、満員、菊田より手紙、明夜大阪通過、戦地へ向ふ由。ハネ十時十五分。竹梅へ、あひがもを食ふ。菜がうまい。一時追ひ出されておとなしく帰る。

[#1字下げ]十一月十二日(土曜)[#「十一月十二日(土曜)」は中見出し] 寒いので眼がさめた、突如冬の訪れだ。上山が佐藤邦夫と来り、十二月ガールスの公演用、「青春デパート」といふのを僕案で立てる。それから正月の題名を定め、一段落。あまり寒いからすき焼を食はうと、厚い外套を着て、守田へ行く。本みやけよりうまいといふが、土台関西のすきやきってもの、否定したい味である。座へ出る。満員である。ハネると、今日はロッパ・ガールスのすきやき会で、宝塚へ、川万の三階大広間、昼間うっかりしてすきやき食ったのでもう食べる気なし。川万のもと泊った部屋でねる。河音、静か。

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