昭和十三年十二月

[#3字下げ]昭和十三年十二月[#「昭和十三年十二月」は大見出し]

[#1字下げ]十二月一日(木曜)[#「十二月一日(木曜)」は中見出し] 十一時まで眠る。二時半、迎へ来り砧村へ。鈴木静一の棒、あきれたぼういずが来てプレスコしてゐる、ふと思ひつき、天勝の代りに此の四人を使はうと、樋口から吉本へ申込ませることにした。で、題も「ロッパ・フォリース」と定め、上山と合作する。たらひ登場に僕の思ひついたファウストのグランドマーチで歌。豪快ぶしを皆で四つ。宵待草の、義太夫入りといふのを一つと、も一つは詩吟入り。終ったのが七時半、まっすぐ帰宅。腹ペコなのでがっついて食事。さて明日出発の京都、あはたゞしきことではある。

[#1字下げ]十二月二日(金曜)[#「十二月二日(金曜)」は中見出し] しばらく味噌汁とお別れだ、わかめと芋を入れさせ二杯食ふ。十二時、迎へ来り、出かける。早稲田の中野実留守宅へ寄り、夫人に正月「新婚二人三脚」をやらして貰ふことをたのむ、笑の王国からも来てるさうだが、断はってくれと言っとく。一時のかもめ。鈴木善太郎の「紙屋橋」を読み了る。沼津で弁当を買ってみる、上等弁当のまん中がガンモである。同行の白川・上山を誘って、食堂の夕食、物足りぬ定食。又読書、高見順の「人間」を読破。川端康成の「抒情歌」にうつる頃、京都近し。駅頭、滝村・三村・斎藤他東宝西の女優連多ぜい。宿は炭屋。滝村からさそはれ、花見小路の万安喜といふうちへ行き食事する。 朝めしのはかなさを思ひ、東京から味噌などを大西に持たしてよこしたのに、汽車中棚から落して、ぶちまけちまひ、だめにしちまった由、しようがなし。

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