十二月九日(金曜)

[#1字下げ]十二月九日(金曜)[#「十二月九日(金曜)」は中見出し] 又彦根へ。 京都ホテルから電話、満州から帰りの織田信恒が会ひたいと言ふ。ロビーで織田の満州話をきく、僕も人の話をきくのはよほど下手だ、小林一三に近いものがある。撮影所へハッキリした予定をきゝに行く。呆れたことには、又今夜出発して彦根へ行くことになった、そんならあのまゝゐればよかったらうに。ホテルへ引き返し、マンハッタンを一杯のみ、日本銀行支店長の鈴木といふ人の招待で、新橋繩手の玉川屋てふうちへ行き食事、日本めしだからつまらず、ジョニオカの黒ありてのむ。九時二十何分で又彦根へ。酒が入ってるから本も読めず、スチームでむん/\眠られず、凡そ苦しむ。十一時すぎ彦根着、八景亭へ。すぐねる。

[#1字下げ]十二月十日(土曜)[#「十二月十日(土曜)」は中見出し] 見廻すと雨らしい、おや/\、何と天候に恵まれざる撮影であらう。十時に起きる。遊山に来たつもりで、気をのんびりさせてゐるよりない。午後、町の活動があるときいて、渡辺・藤原と出かける、帝国館、「天使の花園」と「制服の処女」写真は二つとも面白かったが、小屋が昔乍らの芝居小屋で、寒いの何のって。それからコンキレストランで食事、オムレツとタンシチュー、宿へ帰る。武者小路の「愛情の書」を読み上げてしまふ。ウイはなし、日本酒をのんでみる、此の町の芸妓を二人よんで渡辺・藤原と馬鹿声出して歌ふ。此んなことしてたら全く馬鹿になる。

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