十二月十一日(日曜)

[#1字下げ]十二月十一日(日曜)[#「十二月十一日(日曜)」は中見出し] 又京都。 今朝又曇天につき撮影なし、九時の汽車で京都へ帰ってセットだといふのだ。バタ/″\支度し、さて汽車に乗って、つく/″\馬鹿々々しくなっちまった。宿でダレてゐると、セットの都合で今日は休止と来た。あゝ! 何とつく/″\いやだな、花月劇場へ先日感心した田宮貞楽を見に行く。漫才の旭芳子てのが面白かった。茅野菊子の昔乍らの姿を見たが、貞楽の出る迄は辛抱出来なかった。神戸へのす、円タクへ乗らうとしても「西行きやないと行きめへん」なんて感じ悪く、クサる。元町のベルネクラブ、オルドヴル、フロッグレッグー脂こくなくてうまかった、次の犢の煮込、シャムピニオンのうまかったこと、パンケーキ・スゼット。バアを二軒歩き、京都へ帰ると腹がすいて、鳴瀬で納豆かけてめし三杯食った。 京都あたりの人たちの会話には、間といふものが、東京とはえらい違ひで、カブせるといふことが全然ない。前の人の言葉を理解する迄に、相当暇がかゝるらしい。

[#1字下げ]十二月十二日(月曜)[#「十二月十二日(月曜)」は中見出し] 八時起き、撮影所へ行ったのが十時、大久保邸の庭のセット、「宵待草」のプレイバック二三カットで昼めしになる。悲しきハヤシライスを食った。ステージ変へで体があき、街へ出る、桃園亭で夕食――うまくなし――京極一巡して又セットへ帰る。今日はえらい強行軍で、二日分以上を一気に片付けた。高瀬実乗って人に初めてつきあったが、食ひたくってたまらないといふ芸、年老りだからいたはりたくもなるし、とてもやりにくかった。十二時迄続行、まっすぐ宿へ帰り、軽く食事。 今日昼休みに、試写室でラッシュを見た、眼がねかけてゐない若い時のは、自分で見ても、何か忘れてるみたいで感じが出なかった、斎藤寅次郎も、「めがねのないロッパさんは何だか物足らん」と云ふやうなこと言ってゐた。映画では老けの方が、やりよくもあり、似合ふ[#「似合ふ」に傍点]んだからいやんなっちまふ。

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