十二月十三日(火曜)

[#1字下げ]十二月十三日(火曜)[#「十二月十三日(火曜)」は中見出し] 今日は奈良へロケーションの予定、眼がさめると曇天である。やれ/\又一日仕事がないのだ、と思ふと、いら/\する。さて何とせう、邦枝完二の「江戸名人伝」を読む。清川虹子と江戸川蘭子が宿へ来たので東洞院のミナミへ行き、ポタアジュ・ハムエグス・マカロニ・メンチボールと能率をあげた。京極迄歩いて、日活の小屋で「弥次喜多道中記」を見る、くろっぽいのがいゝ、思ひつきも中々面白く気に入った。徒に、お茶をのんだりして、夜を待つ。祇園の広千代へ九時すぎ柳来る。脚本も来た。正月は、あきれたぼういずとタップの稲葉、ビクターから豊島珠江を貸して貰ふことゝ決定。十一時すぎ宿へ帰る。

[#1字下げ]十二月十四日(水曜)[#「十二月十四日(水曜)」は中見出し] 又々彦根へ。 七時半、ねむい/\、ロケーションバスで奈良行、一時間半以上、ガタクリ/\揺られ、漸っと三笠山の麓へ着く。プレイバック、小百合と恋人の歌、山根寿子と土屋伍一の二人、そこへかけつけて――といふところ。昼になり、弁当ひらくと鹿がたかって来て弱った。午後、サイレントで数カット。帰りはハイヤで、まあ助かった。撮影所へ帰ると「新婚二人三脚」の本を読む、まあ/\といふところ。食堂のハヤシライスかっ込み、セットへ入る。廊下のシーン、一カットで終り。東宝オンパレードの正月短篇のため大久保の扮装で一カット撮り、終ると三度目の彦根行き、車中宇野浩二の「一途の道」を読み出す。十一時彦根着。やれ/\又来た八景亭。 又彦根行と定っちゃあはかない心持、本屋を見渡してもいゝ本がない、ひどく淋しい――と、宇野浩二の新刊随筆「一途の道」を発見したよろこび、やれ/\と喜んで買ひ、汽車に乗るとすぐ貪るやうに読む。

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