十二月十五日(木曜)

[#1字下げ]十二月十五日(木曜)[#「十二月十五日(木曜)」は中見出し] 八時に起された、いゝあん梅に晴れだ。やれ今日で彦根はアガるかと嬉しい。お城の傍の松の木道、プレイバックでタラヒ登城、移動だから中々暇どる、それにタラヒ数十の行列だから、落ちる者があったりして、結局二時迄かゝる。今日は群衆に悩まされた、見せものになる腹立たしさ。二時アガリ、本懐とげた気持で宿へ帰り入浴。京都へは六時着、赤いネオンを見て、やれ/\と思ったんだから彦根ってとこはよっぽど淋しかったのだ。十時頃から出かけて繩手新橋のしほのといふのへ皆で行く、京名物鯛かぶらてものを初めて食ったが、鯛の味がかぶらに劣って、いゝ食味ではなかった。ねたのは結局二時近し。 映画の仕事は、役者はよく/\でないと神経衰弱になる。待ちでボケる上に、ロケで、無知な奴等に、見せものを見るやうな目で見られる、いら/\してたまらない。

[#1字下げ]十二月十六日(金曜)[#「十二月十六日(金曜)」は中見出し] 七時起きで近郊ロケの筈、起しに来ないので十一時近く起きて、きいてみると今日使ふ驢馬が居なくなり、そのため延びて午後ロケといふ話、ロバのおかげでよくねられた。セット入りが三時、大久保平助若かりし日、失恋の歌を歌ふところ、セットへ入ると高瀬実乗が又スットボケた顔してる、いやんなっちまふ。今回の写真は失敗じゃないかといふやうな気がする。午後十時迄、日がな一日セットの中で暮した。プレイバックの失恋の歌、クレーンでやるのでこれが又手間どり、手持無沙汰で待つ。終ると、腹は減るし、ものかなしい、京都の町へ出てギルビイで一杯のみ、鳴瀬へ行って、深山あげで海苔茶漬を食ひ、腹が張って苦しい。

— posted by id at 06:40 pm  

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