一月七日(土曜)

[#1字下げ]一月七日(土曜)[#「一月七日(土曜)」は中見出し] 十二時に座へ入る。補助殆んど出切ってゐる。声が大分いけない、歌になると苦しい。「新婚」のアチャラカ振りは益々甚しい、袖で見てた、生駒のとこの山原老人が「|笑の王国《うち》でも近頃此んなのはござんせん」と言った。昼の終り、日東紅茶のサンドイッチとって食べる。夜も大満員、「新婚」こゝ迄ふざけて、役者が遊んでゐれば、これも一つの魅力かと思ふ。評論家の怒る程、客の喜ぶといふ光景。ハネが十時十分、神戸のマルセル・ルキエン迎へに来り、渋谷のシュヴァリエ邸へ、フランス料理、うまい羊肉、赤白のワインにシャムパン、夜あけ迄のむ。

[#1字下げ]一月八日(日曜)[#「一月八日(日曜)」は中見出し] 朝十時半起きで座へ出る、宿酔気味。気分悪く、芝居に身がちっとも入らない。「フォリース」豊島珠江がトチリ、歌を久米夏子が代った、久米中々行ける。橘から菓子一折届く。スコットのポタアジュとハムエグスのみ。全線座の樋口大祐より、西洋菓子が届いた。夜の部、大満員びっしりである。憂悶が去らず、芝居してゝ、とけ込めなくて困る。「新婚」でアチャラカをやり、お互に吹きっこでもしてゐるのが一ばんか。ハネ十時。あきれたぼういずを誘って銀座ルパン、牛込の鷹の羽へのし、飲む。飲む程に憂悶す。 正月興行は、街頭切符売りの書き入れだ、二円席が五円六円で売れてゐるさうだ。プレミアムも此うなると一寸愉快である。

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