一月十八日(水曜)

[#1字下げ]一月十八日(水曜)[#「一月十八日(水曜)」は中見出し] 雪が降ってゐる。十一時半に出かけて、帝劇へ行く。「台風」[#横組み]“Hurricane”[#横組み終わり]といふジョン・フォードのスペクタクル物、呼びものゝ嵐の場面は、中々面白かったが、結局ミニュチュアの巧用だ。雪の銀座を女房と歩き東劇、「修善寺物語」なので一幕見へ入る、左団次の永遠の大根ぶり、歌舞伎の魅力の薄らぎ方。名物食堂のデンツーで、鶏のクリーム煮とスパゲティ食べて座へ出る。雪だのに補助椅子出切り。昨夜読みし「役者論語」の教訓、「見物を忘れろ」のこと、気になる。われ/\の芝居は見物を忘れるのと、忘れないのと二つの仕分けがむづかしいのだ。ハネ十時。まっすぐ帰って勉強する。

[#1字下げ]一月十九日(木曜)[#「一月十九日(木曜)」は中見出し] 雪の翌日は暖い。今朝は晴。豊田正子の「続綴方教室」を読み出す、やっぱり打たれる。二時に出て、日劇へ、「ロッパの大久保彦左衛門」を見に入る、大満員である。はぢめの方は見てゝも気持がいゝのだが、半分頃から、嫌になって来て、つひに出てしまった。「おとうちゃん」より此の方が当ったとあっては、全く分らなくなる。名物食堂へ行って、ハゲ天で食事。座へ出ると、入りは補助が一寸残ってゐる位のもの。「遠山」の目張りは、幸四郎の「松のみどり」で会得したやうに入れてみる。此の方がいゝ。「新婚」は、冷静になると、やって居られない馬劇。ハネて銀座ルパン、石田・大庭を連れて、気軽に、仕事を離れて飲む。

[#1字下げ]一月二十日(金曜)[#「一月二十日(金曜)」は中見出し] 十一時迄よくねた。「続綴方教室」に没頭する。豊田正子は恐ろしい子である。三時、東宝グリル。柳・菊田・堀井・上山で三月の大阪出しものを練る、「歌ふ金色夜叉」とヴァラエティに、菊田一夫従軍土産「ロッパ従軍記」を出し、序には、渡辺とロクローで「大久保と一心」といふ山盛りで大体定める。ハゲ天へ又行って、食事し、楽屋へ入る。入りは頗るよく補助も殆んど出切ってゐる。「遠山」は、ます/\やり辛く、うはの空みたいになる。「新婚」も同断、馬鹿々々しくてやっとれん。ハネは、十時。あきれたぼういずと柳橋へ行く。四人組が勉強心強いのが心強い。

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