昭和十四年二月

[#3字下げ]昭和十四年二月[#「昭和十四年二月」は大見出し]

[#1字下げ]二月一日(水曜)[#「二月一日(水曜)」は中見出し] 昨夜百間随筆二冊読んじまったから眼がだるい。凱旋の岩井達夫がやって来て、戦争の話をきく。四時頃女房共々出て、中村屋で食事、ボルシチとハンバークサンド、コゝアをのむ。三信ビル地下で理髪する。八時に全線座に山野・玉井・樋口と大辻が来て、富士見町の喜京家へ、大辻の渡米送別会をやる。生駒・関・井口・徳川も来り、面白くなりかゝったところへ、先日来インネンつけてゐた東京発声の重宗社長がこっちの部屋へアバレ込み、めちゃ/\にされてしまひ、クサリ。

[#1字下げ]二月二日(木曜)[#「二月二日(木曜)」は中見出し] 十二時迄ねる。昨夜の重宗の乱暴、池田の無礼が腹が立つので東発へ電話し、池田と五時に会ふ約束する。一時すぎに出て、伊藤松雄を訪問、落語家の楽屋話を脚色してみないかと言っとく。正月興行は評判悪いと言ってゐた。五時、池田とモナミの二階で会ったが、生活に負けた姿で、頭が何うかしてるとしか思へないので話してゝ嫌になり、別れて有楽座東宝劇団の初日を見る。「勧進帳」の長いのにたゞ弱る。「官員小僧」いゝ加減で切り上げ、ルパンで二戸・友田と会ひ、結局田中三郎の面白くもない話――此ういふ馬鹿なことで一日潰したのが口惜しい。「官員小僧」の始まる前に、作・演出の川口松太郎、食堂で日本酒をあほる。「おれ位顔の皮が厚く出来てゐても、初日は一杯のまんと自分の芝居が見られないんだよ。」こいつは面白い。

[#1字下げ]二月三日(金曜)[#「二月三日(金曜)」は中見出し] 一時柳の麹町宅へ行き、要談。女房同道、ちまきやの菓子を買って、橘弘一路宅訪問、久々禁を破って雀戯数刻、成績よからず。

— posted by id at 09:16 am  

T: Y: ALL: Online:
Created in 2.0138 sec.

http://ebook-my-home.com/