二月十日(金曜)

[#1字下げ]二月十日(金曜)[#「二月十日(金曜)」は中見出し] 又今日も撮影なし。十一時半に出かける。東宝ビル、社長支配人と、四月の企画打ち合せ、天勝より「ロッパの鶴八鶴次郎」の方がいゝかも知れない。山野特別出演扱ひとして、金を払ひ、一旦専属を解く。それから東配へ森岩雄を訪れる、ニューグランドでゆっくり話をした。一座の方針、給金のこと打ちあけると、「ハゝア、ねえ、うまさうな人が案外下手なもんですなア」と痛いところをやられる。夜は、阿部豊と会ひ、ルパン。映画ばなしは常に面白し。ハリキって今年は!

[#1字下げ]二月十一日(土曜)[#「二月十一日(土曜)」は中見出し] 朝――全く朝だな、八時起き。いゝ心持、みっちり仕事しよう。九時すぎ砧村。支度して待ってるのに中々始まらない。徳川夢声と藤原釜足が遊びに来る。結局昼飯となり、食堂ではかない定食を食って、一時すぎセットへ入る。二カットで三時すぎた、エキストラの婆さんが、セリフを言ひ損って、何度も/\やり直す、それからもう一カット、和服で読書してるとこで今日はアガリ。急いで演舞場迄かけつける。新国劇、トリの「沼津兵学校」に出る古川信誉といふのが、僕の養祖父だといふのでその縁故で招待され、母上・女房と見物。幕間に古川に扮した小川虎之助と楽屋でスナップ。銀座の鳴門で食事して帰宅。

[#1字下げ]二月十二日(日曜)[#「二月十二日(日曜)」は中見出し] 九時に家を出て、砧村へ。一カット撮ると、昼めしだ。午後は、青路先生の下宿してゐる二階へ、月田一郎扮する川端といふ盲人の琴弾きが訪ねて来て、茶釜をたぎらせてじっとその音をきいてる渋いところ。月田一郎、セリフでさんざ苦労する、映画の人は、セリフで苦しむし、演出家の注文がきけない。今夜は徹宵で、青路の二階のセットをあげてしまふことになった。その腹になり、五円出して、セットの連中に、しること雑煮を食はせるので材料を買はせにやる。夜の七時すぎから又青路の家。阿部豊が細かい、凝りを見せるので、一カットに二時間もかゝる。久しぶりの徹夜仕事だ。

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