二月二十八日(火曜)

[#1字下げ]二月二十八日(火曜)[#「二月二十八日(火曜)」は中見出し] 北野劇場舞台稽古。 たっぷりと寝たが、又今夜徹夜では――。二時半劇場へ入る。「ロッパ従軍記」から始める。菊田も労れて、馬脚をあらはした感じ。風呂へ入るとこなどいやな場面あり、クサる。これがすんだのはもう十時。ライスカレーかっ込む。一休みすると、「春のサーカス」新しいものだから暇がかゝる、これで夜があけちまった。「歌ふ金色夜叉」にかゝったのが、八時近くだったか。サトウの荒尾が場違ひな感じ、花井の赤樫もピッタリ来ない。幕切れを緞帳を下して幕外の引込みをつけてみた。こいつは受けるやうな気がする。十時すぎに竹川へ帰る。労れた/\と眠る。「金色夜叉」の幕外の引込みを思ひつき、「勧進帳」の弁慶の引込みだネと笑ふ、あれは飛六法だが、これは、ハイこれは古川ロッポーで。[#改段]

[#3字下げ]昭和十四年三月[#「昭和十四年三月」は大見出し]

[#1字下げ]三月一日(水曜)[#「三月一日(水曜)」は中見出し] 北野劇場初日。 四時起き。初日に限り四時半開演だ。座へ着くともう売切の大満員。「歌ふ金色夜叉」で僕、初めて顔を出す。「金色」は、手に入ってゐるのだが、サトウの荒尾が、てんで田舎廻りでひどい、渡辺の富山も思った程でなし、それに音楽が宝塚の若いコンダクターでこれもいかん。「春のサーカス」は、封切だが、わりにまとまってゐた。トリの「ロッパ従軍記」があんまり面白くないとこへ、セリフが入ってなし、皆もボケてるので、かなりさん/″\であった。ハネ十一時。客、静かで甘し。竹川へ帰る。湯豆腐と天ぷらなど食ひ、労れたりと眠る。

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