三月十四日(火曜)

[#1字下げ]三月十四日(火曜)[#「三月十四日(火曜)」は中見出し] 朝早く高橋姉帰京。十二時迄ねる。熱海の椎茸をソティーして食べる。二時から朝日会館へ行く。キネマ旬報のベストテンの映画会、見損ってゐた「五人の斥候兵」を見に。田坂具隆は確りしてると感心する。が、思ったより面白くはなかった。千疋屋で、サンドイッチを食ひ、座へ出る。入りは九分か。柳の言ふこと常に常識外でクサる。「春のサーカス」の時、ハリキリボーイ、ちゃんと僕の直した通りやらせてるので拍手抜けした。楽屋の空気一掃せねばならぬ。帰宅十時四十分頃。

[#1字下げ]三月十五日(水曜)[#「三月十五日(水曜)」は中見出し] 昨夜又麻雀となり、田中三郎・堀井と今朝六時に至ったので、起きたのは一時半。三時から試写があるので、女房も共に、福徳ビルの東宝試写室へ。「頬白先生」試写。辷り出しが気に入らないが、全篇稀に見る浸々したもので、終ったら新聞記者らしいのが拍手してゐた。近くの支那料理へとび込んだら、案外当りで、五円二人前といふのが中々うまかった。座へ出る。九分の入り。「金色夜叉」の時、前列にポカンと口をあいて寝てる客あり、よく/\見れば渋谷天外なのだ、呆れてしまふ。ハネると、自転車の鈴木義豊を誘って、サンボアをふり出しに、パオンへ行き、すしを最後に。一時半ねる。

[#1字下げ]三月十六日(木曜)[#「三月十六日(木曜)」は中見出し] 十一時起き、夫婦でガスビルの永田氏を訪れようといふ日。十二時半頃ガスビルへ。永田将紀氏が八階の食堂へ案内、アラカルト、ポタアジュ及第、帝国ホテルの料理人が来てるのださうだ。トルネード、うまからず、ドレッシングがうまくてサラダ美味し。一旦宿へ帰り、三ちゃん・英・竹川と一荘やり、勝つ。六時近く座へかけつける。「金色」のロクローで毎日くさり、「ロッパ従軍記」は、これ又毎日腐演である。ハネ十時十分頃、宿へ帰って、すきやきを食ふ。それから三ぶちゃんとポーカーをやったり、おとなしく遊んで一時半頃床につく。「金色夜叉」の大詰で三益のお宮が鏡を出し、ライトを当てゝ歌ふ。それにつれて鏡を動かし客席を照すのだが、光の当った客が、東京では笑ひ、テレ、或ひはプロや帽子で顔をかくした、大阪では、何と平然と目もつむらぬ人が多いのには呆れる。大阪人は、見栄をはらぬし、テレないのか。

— posted by id at 09:23 am  

T: Y: ALL: Online:
Created in 2.0805 sec.

http://ebook-my-home.com/