三月二十日(月曜)

[#1字下げ]三月二十日(月曜)[#「三月二十日(月曜)」は中見出し] 今日は谷崎潤一郎氏を訪れる筈だったが、旅行中とあって、中止。花井・藤田・北村が来た、柳の話が出る、感じ悪きこと後から後から出る。此の連中と道頓堀でチンピラ劇といふのを一幕見る、五六歳の子が剣劇をやる、気味が悪い。天華クラブの支那料理を食べる。何とも体裁の悪い料理ばかりだが、うまい。たっぷり食って満腹。梅田映画劇場へ入り渡辺篤の「娘の願はたゞ一つ」を見る。斎藤寅次郎の馬鹿々々しい笑ひ。座へ出る。満員である。川口松太郎来り「ロッパの鶴八鶴次郎」の脚本出来、ちっとも笑がないので面喰ふ。弱ったものだ。ハネ十時十分。又、安宅商会から頼まれて北の蓬来で一席やる、すしやへ寄って帰る。座員藤田芳江、宝塚ホテルで怪我した。

[#1字下げ]三月二十一日(火曜)[#「三月二十一日(火曜)」は中見出し] 又マチネーだ、座へ出る。満員だ。嘉納健治先生の御入来、それッと皆かしこまる。ごきげん頗るよく、一同に祝儀が出る。那波支配人より手紙、四月はぜひ歩み寄ってマチネーを九日までやって呉れとのこと、いやだ。夜の部、満員だ。柳が東京へ行ったので、反って気分よし。此の旅も成功だった、入りのいゝこと、受けること。女房と竹川来る、千日前の喜久の家てのへ行く、汚くてまづし。読書ってものしばらくしない、今宵も亦何となくねる。

[#1字下げ]三月二十二日(水曜)[#「三月二十二日(水曜)」は中見出し] 十一時起き、大庭と伊東が来て待ってゐる。朝飯が、もう納豆も鮭もなくて味気ない。麻雀開始、夕刻迄打続け、座へ出る。菊田・斎藤来り、配役打合せ、明日からけい古に入る。入りはよろし、九分か。那波支配人より電報で九日迄マチネーをやる案に賛成して呉れ返事待つとのこと、腹が立つ、「ゴカンベンネガフトヨリコトバナシ」と返事させる。「従軍記」スピードかけたらいつもより受けた。不しぎな現象。ハネてから、鈴木重三郎満州行の送別会へ行く。南のパオンである。皆々大いに酔ひ、我も通りの看板を外したり、提燈をカッパラったり、百鬼園的酔を発揮した。ねたのが三時すぎ。

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