三月二十九日(水曜)

[#1字下げ]三月二十九日(水曜)[#「三月二十九日(水曜)」は中見出し] 朝ゆっくりねる、穂積純太郎が待ってゐた、辞職届を懐に――文芸部が柳や清水の暴力的圧迫を受けるので辛いと言ふ、困ったものだ、辞職届はあづかって置く。鏑木清一も近処へ越したからと顔を出す。一時に文ビルへ。「百鬼園」のセリフの多いこと憂欝である。「鶴八鶴次郎」は川口も、可笑しくなくって弱ると言ひつゝやってるが、全く大まじめなので弱る。花の茶屋へ約束の滝村と会ひ話す、吉本並に東宝の漫才を引抜かれて大あはてしてゐる、吉本の如く芸人を苛めてゐては、此うなるのは当然であらう。ルパンへのしてウイ。

[#1字下げ]三月三十日(木曜)[#「三月三十日(木曜)」は中見出し] 急にたのまれて月島の陸軍病院へ慰問に行く。昨夜手ひどく咳が出たと思ったら今朝声が悪い。樋口付添、三益と共に慰問を済ませて、文ビルへ。二時から「百鬼園」を立ち、つゞいて「鶴八鶴次郎」。六時から「従軍記」の舞台けい古故、ホテルのグリルへ行き、オニグラとフィレソール、ボンファムを食ひ有楽座。小林一三来り、サトウロクローをハチローと間違へたりして、面喰はせる。九時新喜楽の文藝春秋社の会へ。菊池氏・川口・岩田専太郎と米田家へ行き、ウイをのみ、スコットを食べる。寄せ書を戦地の中野実に書く。一時頃引きあげる。

[#1字下げ]三月三十一日(金曜)[#「三月三十一日(金曜)」は中見出し] 有楽座舞台稽古。 伊藤松雄に電話して舞台稽古に来ないかと言ったら、何か怒ってるらしく、来ないやうな返事、又うるさいな、放っとく。座へ二時近く出た。セリフやってると、ヌウッと部屋へ入って来たオットセイの標本みたいなのが「私が内田百間です」成程変ってゐる。「百鬼園先生」の稽古が三時すぎから。妙な味の芝居で、一寸いゝかも知れない。内田先生づっと見てるので、弱った。終ってホテルのグリルへ。スープ抜きで、チキンコロッケ、マカロニとヨークハムを食ふ、ヨークハムとてもよろし。座へ帰ると、「鶴八鶴次郎」に入る。笑ひを随所に盛り込みつゝ行く。川口はキビ/″\してゝ演出はいゝ。三時すぎ帰ると、セリフの残りをやっちまふ気。[#改段]

— posted by id at 09:25 am  

T: Y: ALL: Online:
Created in 1.9994 sec.

http://ebook-my-home.com/