昭和十四年四月

[#3字下げ]昭和十四年四月[#「昭和十四年四月」は大見出し]

[#1字下げ]四月一日(土曜)[#「四月一日(土曜)」は中見出し] 一時に眼がさめた、起きてセリフをやる。四時迎へ来り、五時開演の初めっから出てるんだから、出かける。座へ行く、売切の満員だが、席にはまだ客が揃はず、それに「ロッパ従軍記」がつまらず、客は食ひつき損った。次の「百鬼園先生」は思ったよりアッピールして悉くシーンと静まり返って見てゐる。ヴァラエティ「春のサーカス」で、シュヴァリエ風のウイ・ハヴ・ノー・バナゝを歌ふ。「鶴八鶴次郎」幕あきの各漫才よく受けた、さて三益との漫才、全然打ち合せなしの打っつけにやったのだが、実によく笑ふ。あんまり笑はすために真面目に運ぶとこが利かなくなり、此の後の芝居は不出来だった。ハネ十時四十五分。カットの打合せで残り、帰宅十二時近く。特出の高杉妙子、急性盲腸炎で今朝入院、久米夏子が代役した。

[#1字下げ]四月二日(日曜)[#「四月二日(日曜)」は中見出し] 二日目のマチネー十時半に入る。既に売切れの大満員である、「従軍記」のホテルの場が、セリフが入ってないので間が抜けた、菊田がカン/\になって怒ってた。「百鬼園」は、日曜の客には何うかと思ったがよく受けてる。「鶴八」もよく受ける。伊藤松雄、来る。来れば怒ってる様子もなく、分らぬ人なり。夜の「従軍記」が又ドマついたので又菊田が荒れ、帰っちまった。三益が生意気になり、面白くない、川口迄三益の他の舞台に口を出したりして、座内空気一掃の必要をしみ/″\感じた。夜も「百鬼園」よく受け、「鶴八」もまあ/\であった。ハネは十一時すぎる。よっぽどカットの要あり。やれ/\八度舞台へ出ては労れる。

[#1字下げ]四月三日(月曜)[#「四月三日(月曜)」は中見出し] 又今日も八度舞台へ出る、いやはや全く好きだと思ふ。昼の部、大満員である。昨日荒れた菊田がケロリとして機嫌よく出て来てるので可笑しかった。東宝映画の連中来り、明日の一時頃から「忠臣蔵」のワンカットだけ撮って呉れと言ふ。労れてるとこ故、いゝ返事は出来ない。「従軍記」これがムダだ、つまらない。「百鬼園」は評判よく、やってゝも気持がいゝ。妙なものが当る。「鶴八鶴次郎」も、漫才が出来不出来があるが、今回一ばんの爆笑は此の漫才にある。コロムビアの服部良一が来り、ルパンへ行く。それから日本橋の何とかいふうちで飲む。

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