五月二日(火曜)

[#1字下げ]五月二日(火曜)[#「五月二日(火曜)」は中見出し] 昨日の昼一時頃から始めて、二十四時間打通し、十六荘といふレコードを作った。が、何と又、何かゞツイ[#「ツイ」に傍点]てゐるやうに、落ち目で、十六荘中一回もプラス無し、三万符近く負け込んでしまった。さあ、これより休養だ! 東京駅へ、二時二十三分で熱海へ向ふ。熱海着四時半、伊豆山相模屋へ落着く。海を眺め、実にいゝ心持だ。入湯、湯滝を味はふ、快し。九時前に床へ入り、本も読まずに寝てしまふ。 伊豆山相模屋の室からは海を見渡せる。これから何日か、海を見て暮せるのが嬉しい。今日は浪が高くて音がすさまじい。海の上の空の動きも眺めてゐて嬉しい。

[#1字下げ]五月三日(水曜)[#「五月三日(水曜)」は中見出し] 八時起床、今日は快晴、海を見る幸福。湯滝に当り朝めしを食ふ。さて、用は無し、女房とも/″\熱海へ出る。熱海宝塚劇場へ入った。ビクター東宝提携の「船出は楽し」といふのは、呆れ返った愚作。「友情と兵隊」英国物、これはまし[#「まし」に傍点]だ。こゝを出て、緑風閣迄歩く、海を眺めながら天ぷらを食った、建物と景色はいゝが、天ぷらはまづく、値は高い。天二物を与へず。宿で宇野浩二の「楽世家等」を読み、八時頃又飯を食った。それから竹屋の息子に頼まれた、中学生用の脚本を「五十年後の同窓会」といふ題で十六枚、一時迄に書き上げた。 湯滝の快さ、ハイカラでないところ、非文化的なところが丁度煎じ薬を飲むやうなよさで、きく[#「きく」に傍点]やうな気がする。伊豆山、熱海を控へてゐるだけに、ちっとも退屈しないで済む、シャバッ気の多い者でも辛抱出来る所以。

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