五月四日(木曜)

[#1字下げ]五月四日(木曜)[#「五月四日(木曜)」は中見出し] 此の宿に一つの大欠点がある。蠅のゐること。五月の蠅でウルサイとはよく言った。ハンケチを被ってねる。足へチョコ/\と来る、かなはん。東京へ電話し、橘弘一路夫妻に、来ないかと誘ふと、夕刻伺ふとの返事。ひょっこり堀井夫婦現はれる。四時半頃橘夫妻が風月の菓子を持ってやって来た。ではやらうといふことで、麻雀一荘。賑かに夜食――こいつが宿の食事で、その不味さ。又麻雀を始める。づーっとやって午前四時。はや、海ほの/″\と蒼し。

[#1字下げ]五月五日(金曜)[#「五月五日(金曜)」は中見出し] 蒼く明け行く海を見ながら風呂へ入り、それから寝た。蠅が顔へたかって十時に眼がさめる。湯滝を浴び、皆で揃って朝食、大勢だと美味い。食後、又麻雀になり、五時頃迄やり、揃って風呂へ入る。花井は、沼津行きとやらで出発し、残る五人で、一休庵迄出かけ、普茶料理を食べる、例によって僕だけ二人前食べる。皆とてもうまい/\と喜ぶ。伊豆山へ帰る。高橋の夫婦も来たり、大した賑かさである。それから又麻雀となり、午前三時すぎ迄。明後日で帰京だ、六・七・八のプランだけは立てゝ置きたいものである。橘夫妻・堀井は明朝早く帰る由。

[#1字下げ]五月六日(土曜)[#「五月六日(土曜)」は中見出し] 十二時迄寝た。入浴する、湯滝の快、たっぷり浴びた。高橋夫妻、箱根へ出かけた。朝食して、「チェーホフの手帖」を読み上げ、かねてから練ってゐた、チャプリンのための原稿を書く。五枚に簡単な筋を書き上げる、これを森氏にたのみ、高野氏を通じてチャップリンに送って貰ふつもり。又、湯滝。上山雅輔来る。先づ風呂へ入らうと、又湯滝を味はふ。七時頃万平ホテルへ行く。食事、いやはや美味しくない。宿へ帰って、女房と蠅とりを持って蠅狩りする。上山と夜更ける迄、色々プランを立てる。二時頃迄「マリウス」を読みて寝る。

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