五月十五日(月曜)

[#1字下げ]五月十五日(月曜)[#「五月十五日(月曜)」は中見出し] セット入り。 七時すぎにダットサンで家を出る。かなり揺れるが、コクリ/\やり乍ら行く。田舎の大助の家の台所のカット、煙がもう/\と立つ、むせ返りつゝ二三カット。これで昼食となる。腹は空かないが、定食を食ふ。今日は明治座の切符がとってあるのだが、中々終りさうもない。午後は、同じセットで鯉つかみのさわぎ、三益の娘と酒を飲み乍ら話すところ、初日のせいか調子が出て来ない。明治座は上山をやることにした。夜、まずいものなら食はぬがましと、食事せずに、赤ん坊の件りを撮る。生後三ヶ月の子供が、とてもよく芝居したので大助かり。九時に終る。鈴木静一と代々木八幡の夜店を見て、神楽坂のゑびす亭で牛鍋食って帰宅十二時近く。

[#1字下げ]五月十六日(火曜)[#「五月十六日(火曜)」は中見出し] 七時半に食事だ。ねむい/\。午前中数カット。十年後の大助の家、悦ちゃんといふ子と初めてつきあふ、相当な子、まるで大人で、感じよくない。食堂で、情ない食事、一寸風邪ッ気で熱があるやうな気がする。床山がハゲヅラをつける時、濡手拭の堅い奴で、遠慮なくおでこを打つので気分が悪い。午後も専ら悦ちゃんを相手に、力だめしに大きな石を持ち上げて見せるとこなどやる。森岩雄、セットへ現はれ、チャップリンのためのストーリーは面白いから翻訳にかゝったと言ふ。夜も食堂の飯、げんなりする。十時迄かゝり、チョン。ダットサンで帰宅。アスピリンのんでねる。 撮影所ってものは、何ういふわけで遠く不便なところにあるのかと、今更乍ら腹が立つ。往復の不便は、もとより、食ひもので一ばん悲しくなる。食堂の飯を続けて食ってると、全くヘンになってしまふ。今夕あたりも、双葉亭が食へるかと楽しみにしてゐたのに、やれ/\。

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