五月十七日(水曜)

[#1字下げ]五月十七日(水曜)[#「五月十七日(水曜)」は中見出し] 八時、晴れたからロケ。先づ渋谷松濤の公園で二カット、麻布の郵便局前で一カット。これで昼迄暇になった。銀座へ、三昧堂で新刊数冊求め、千疋屋でシャベットやコーヒーのみ、砧村へ。十二時からのプレスコが、鈴木静一来らず待ち。漸く三時近くから。郵便屋の歌二つ入れる。それからセット入り。支度して行くと、一区切りしたから夕食だと、又カツラを外して、待ち。石川欣一の「大阪弁」を読み上げて、大岡竜男の「妻を描く」にかゝる。夜、渡井の家のセット、渡辺・三益と気が合ってるから楽だ。終ったのが九時。渋谷の白十字で、一人はかなくチキンカツを食って帰宅。 さて妙な商売だなアと、ふとセットの待ちの間に思った。朝早く起きて、市中で爺になって歩き、今度は又こんな所へ来て、たゞうだ/″\と待ち、セットへ入れば怒ったり笑ったり――。

[#1字下げ]五月十八日(木曜)[#「五月十八日(木曜)」は中見出し] 六時半起き、たのむから、もう少し眠らせてくれといふ気持。七時すぎに迎へ来る。成城駅前あたり、職業を求めてるところと、撒水車を挽いて歩くところ、撒水車の重いこと、肩を凝らしちまった。十一時前にアガリ、撮影所へ帰って食堂のめし食ふ。試写室の満洲映画を見る。大谷俊夫演出の、李香蘭主演物、馬鹿々々しいが面白かった。二時近くからセット入り。料理屋の板前になったところ、石田守衛が僕と渡辺に揉みくちゃにされる場面。珍しく夕方アガリ。銀座へ出る。小松で理髪し、ホテ・グリで滝村と食事、トマトクリーム、フィレソール、鶏の煮たの、アスパラガス、コーヒー、苺のバヴァロア、八時帰宅。 撮影してると、毎日一冊宛、本が読めるのだけは嬉しい。どん/″\色々なものを読みたい。思へば撮影所の食堂位、色々な客が来るとこもなからう、下は一日何十銭の日給の者から、上は一ヶ月何千円の大スター迄、それが同じ二十銭の定食を食ふのだ、中々むづかしからう。

— posted by id at 09:34 am  

T: Y: ALL: Online:
Created in 1.9991 sec.

http://ebook-my-home.com/